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よんだーよ

読んだ本の感想を書いていきます。色んな人が本を読むきっかけになれば良いな。

上橋菜穂子「精霊の守り人」感想

上橋菜穂子「精霊の守り人」
いちばん最初に書くのは、どうしてもこの本がよかった。
www.kinokuniya.co.jp

<<女ながら、腕のたつ用心棒であるバルサは、偶然、新ヨゴ皇国の皇子チャグムの命をすくう。だが、このチャグム皇子は、ふしぎな運命を背負わされた<精霊の守り人>だった。深い水底に住み、百年に一度、卵を産む精霊<水の守り手>とは何か。そして、夏至祭に隠された秘密とは?チャグム皇子を追って、ふたつの影が動きはじめる。(「精霊の守り人」カバーより)>>

この本を薦める理由は3つです。
①文化人類学的素養が活かされた凄まじい世界観
②キャラクターが皆魅力的
③ストーリー

世界観、ストーリー、キャラクターのどれをとっても魅力的なこの作品は、間違いなく傑作です。
(この「精霊の守り人」をはじめとする「守り人シリーズ」とジョナサン・ストラウドの「バーティミアス三部作」は私のなかの2大巨頭です。
その後の人生を変えてしまうくらい面白いので絶対読んでほしいし、もしこの記事を読んでくれているあなたにお子さんがいたら是非お子さんにも薦めてほしい。
でもこの本の対象年齢ぐらいの子って、親に薦められたものは無条件で嫌がったりするので、できればそっと、子どもの目に入るようなところに何も言わずに置いておいてほしい。)

◆世界観
世界観がね、圧倒的なんです。
国の成り立ちとその伝わり方、地理や気候、風習と宗教の在り方、伝承、歴史、家畜の在り方と暮らし方、すべてが相互に関係している。
互いに影響を与え合って、あっちで起きたことがこっちにつながったり、こっちでよかったことがあっちで駄目になったり、すごく複雑な仕組みになっているけれど世界にとってはそれが自然なこと。
新ヨゴ皇国は神である帝がおわす国で、だからこそ常に清く正しくあらねばならない。そんな神である帝の血を引く皇子が、何だかよく分からない魔物にとりつかれてしまうはずがない。
今新ヨゴ皇国のある土地には昔「ヤクー」と呼ばれる先住民族がいたけれど、新ヨゴ皇国建国神話によると彼らは初代新ヨゴ皇帝軍の「立派さに驚いて」「自分から」村を捨て山奥へ引っ込んでしまったという。
今ではヨゴ人との混血が進み、純粋なヤクーは滅びへ向かっているけど、
滅びへ向かう彼らの、何気ない歌のなかに建国神話にかかわる魔物との戦い方が隠されていたり。

アボリジニやネイティブアメリカン、アイヌを思わせるようなヤクーのありかた・・・というよりも植民者の在り方や、
神話、伝説の歴史との関係、歴史と気候・地理・宗教の関係・・・それらが全部日常とつながっている面白さ。

上橋先生の世界の見方が、私はすごく好きです。
中沢新一とかが好きな人はハマるんじゃないかなあ。

◆キャラクター
私はこの話に登場するキャラクターの矛盾の受け入れ方と、嚙み合わなさや現実にちゃんと向き合うさまが大好きです。
主人公のバルサはいわゆる「女性らしい女性」とは程遠く、「短槍使いのバルサ」と呼ばれその強さは屈強な兵士もかなわないほど。
でもその強さはかんたんに手に入れたものではなく、幼いころから幾度も死線をくぐり抜け、つらく苦しい思いも重ねてきた結果です。

彼女に守られることになる皇子のチャグムは、生まれた時から神の子として育てられていたにもかかわらず、異界の生物にとりつかれ実の父である帝から命を狙われることに。
なんで?どうして父上が?どんなに不条理でも、自分がそれを覆す術を持っていない以上、生きるためには事実を受け入れバルサと共に逃げるしかありません。

星を読み国を導く、星読博士のシュガ。今でいう官僚のような立場の彼ですが、自分の国が「清く正しい」国を守るためにきたない手に頼っていることを知り、
あこがれていた星導師の椅子が輝いたものに見えなくなってしまいます。

彼らはみんな、受け入れ難い現実に直面しますが、きちんとそれに向き合い、現実を受け入れます。
そして守られているだけではいけない、
生きるためには自分の頭で考えて決断し、行動する必要があることを知るんです。

つらく苦しいことがあったときや、このままではいけないとなんとなく感じるのに
今の環境が楽だから動き出せないとき、彼らならどうするか、何て言うかを考えると自然とやる気が出る気がします。

◆ストーリー
ぜひ読んで確かめてみてください!

私がこの本に出会ったのは15年ほどむかし、まだ小学生だったころ。
はっきりとは覚えていないものの、本屋で二木真希子先生の表紙を見つけてこれが読みたい!とでも言ったんでしょう、
当時本だけは何でも買ってくれた母が買い与えてくれました。

初めて読んだときはあまりの面白さに感動し、一日に何回も読み返してしまったことを覚えています。
私がそんな風だったから母も読み、母もハマり・・・二人で一緒に感想を話したりして2倍楽しみました。
懐かしい思い出です。


小学生の時に読んだこの本がきっかけで私は文化人類学に興味を持ち、結果的には大学の進学先も決めてしまいました。
それぐらい、パワーを持った作品です。


偕成社のまわしものみたいな記事になってしまいましたが、良かったら読んでみてね。

精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)

精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)

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